今回のテーマ:視覚障害者的釣りの工夫

私の釣り歴は40年以上に及びますが、視覚障害者としてのキャリアは1年余りと極めて短いと言えます。ただ、眼が見えないからといって釣師としての寿命が費えたわけではなく、退職により時間という鎖から解き放たれた現在、奥義を極めるチャンスが到来したと大いに期待しているところです。
ここでは、釣技とまではいきませんが、ここ1年で見出した釣師としての工夫や考え方の一端をご紹介して、障害者のみならず世のフィッシャーマン書誌の更なる技術革新のトリガーとならんことを節に祈り、しまくんのワンポイントサジェッションをお送りします。

1)安全確保が第一
何でもやってやるという意気込みは障害者にとって大切ですが、同伴者や家で帰りを待っている家族に心配や迷惑をかけるのは禁物。何より、安全を確保する事前の調査や準備が大切で、その準備は釣果にも影響を及ぼすことを心に留め置くことが必要でしょう。ライフジャケットの着用等、具体的な話は主題から外れますので、ここでは割愛します。

2)大名釣りを基本にしよう
視覚障害者にとって、動き回ってポイントを探るような釣りは潜在的に危険度大です。魚を」迎えに行く」のではなく、肴の方にきてもらうのが理想です。また、浮子釣りのように視覚をたよることもできませんので、ここでいう大名釣りとは、基本的に投げ釣りで、仕掛けを投入したらあとはビールを飲んだり、音楽を聴いたり、思いつめずにゆったり構えるモノグサフィッシングです。

3)太糸仕掛けで勝負しよう
仕掛けづくりや釣りにつきもののお祭りのフィックスを他人に頼るようでは釣師ではありません。極力自分でフィックスするなら、手探りでの作業が容易な太糸を使用しなければなりません。一般に細糸にくらべ肴に見破られ易いのは事実ですが、投げ釣りのように下から這う仕掛けには、チヌのような敏感な肴も案外警戒心が弱まるとの観察結果もあります。この釣りでは必ずしも太い道糸やハリスは気にしなくてよいのです。

4)投げ釣りでもフカセは可能
これは既にテスト済みですが、投げ釣りでハリスを長く取り、針の近くにシモリ浮子をつければ仕掛けはフカセのように海中でゆらゆらします。シモリをつけることによりもつれ易くなる傾向はありますが、中層魚のメバルがこれで先ず先ずの釣果でしたので、チヌやスズキ等、中層を好む他の肴にも有効と見ています。

5)仕掛けのモツレや根がかりへの事前準備を
お祭りや根がかりは釣りにつきものですが、素早いリカバリーは釣果を左右するだけでなく同行者に迷惑をかけないための最低のエシケットです。例えば私は交換用仕掛けをサイフ状の市販のmd入れに収めていますし、そこに入れる仕掛けはダブルスナップつきサルカンを使用し、釣り場での仕掛け交換のスピードアップを心がけています。また、竿のガイドも見えないので、緊急時に道糸を手探りで通せるよう一番小さなヘアピンを嫁さんの小物入れからこっそりスティールして忍ばせています。

6)未解決の課題
以下は依然解決策を見出していない課題です。アイディアやさじぇっしょんがあればご提供をお願いします。
・吊り上げた魚が何なのか認識できず、ハオコゼやタチウオ等、時に危険な魚を釣り上げそのまま触ってしまう危険がある。
・同じく、釣上げた肴がよく見えないことから、釣上げた後にアタマの中で魚がどんどん 成長してしまい、1年後の話しでは倍ぐらいにサイズアップしてしまうことが多々ある。

<前ページへ戻る